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られ、胃炎・消化性潰瘍・胃癌といった胃疾患、高齢者、発展途上国などでその感染率が高いことは、よく知られる疫学事項になった。これについては、環境要因がこの感染率の高低に関わるという見方がある。我々は、環境の異なるであろう農村と漁村という対比で感染率を調査したが、漁村の方に若干高率の傾向はあったものの、明らかな差は見出せなかった。また、一般的に慢性胃炎の本邦感染率は60〜80%程度で、消化性潰瘍のそれは80〜95%程度であり、両地域とも、本邦の他地域と大差のない状況であった。
H.pylori感染における宿主要因の解析は重要課題であり、本菌に対する胃粘膜の受容体の探究は近年精力的に進められ、既にいくつも報告されている3)。我々も示したように、地域に拘らない感染状況から、本菌の感染・定着に寄与する胃内受容体は、広く常備された、比較的ありふれたものと推定されよう。
旧くから胃疾患の宿主要因として血液型が注目されてきた。すなわち、血液型O型者に消化性潰瘍が発症しやすいと報告されて以来、胃疾患と血液型の関係は数多く検討されている。代表的な意見を列挙してみる:十二指腸潰瘍はO型者に多く、B型者に少ないが、胃潰瘍では観

 

 

 

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